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輸送艦の話 (その3 輸送力不足) [自衛隊・輸送艦など]

記事の続きです。


一応最終回。


私が思うに、海上自衛隊の艦艇の中でもっとも多忙且つ不足しているのは、この輸送艦   だと思います。

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有事の対応、とか言う前に、平時や災害時にも




離島防衛(つまり有事)、災害救援、病院船、入浴・給水支援、在外日本人・外国人の緊急輸送など(以下、[多彩な任務。]とする)をこなすが、どれか1つでもきりきり。まして複合事態では輸送力・収容力が明らかに足りない。


このことはおおすみ型輸送艦自体の能力が不足しているわけでは全くない 、と私は考えます。


RORO機能もあり、上甲板がフラットなためヘリコプターの運用、物資や車両の搭載もどれもそこそこに柔軟にできる。



そこまで大型な艦でも小型でもないため輸送力がありつつも、小さ目の港湾にも入港できるという、平時においてはメリットにしかならない特性もある。

むしろ当時の予算や大きさの制約の中で優れた艦を建造できたと思っている。


また、最近はDDH(実質ヘリコプターなどを主に運用する空母)の登場により以前に比べれば、おおすみ型輸送艦にかかる負担は減っているといえる。



DDHは多彩な任務。の中でもおおすみ型の、機能の多くを持ち、艦自体の大きさも大きい。



今声高に、大型の強襲揚陸艦に類した艦が必要だと言われているが、費用対効果やら考えるとビミョーに思う。

日本の防衛環境は特殊である。四面環海、専守防衛というどちらかと言うと守る側に有利な側面を持っている。


他国のように本格的な敵前上陸作戦を行う必要性もない。


いくら大型高性能高価な艦が2隻くらいあっても、一隻のカバー範囲は一エリアのみ。


災害時の対応やらにはむしろ数がものをいう。



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フェリーと輸送艦の違い(その2 ウェルドック) [自衛隊・輸送艦など]

続きの話になります。

海上自衛隊。
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おおすみ型輸送艦(おおすみ、しもきた、くにさき、の3つの同型艦がある)にはウェルドックという、車両甲板よりも少し床面の低くなった、海水が入るプールみたいな場所があります。
後ろの扉が開いてLCACなどが発進します

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ウェルドックはまさしくスーパーアイテムで、LCAC(米国製ホバークラフトの高速揚陸艇)や高速ボート、AAVー7(海上航行できる水陸両用の装甲車のこと)[以下3つ、舟艇等。とする]
を運用して揚陸を行うのに必須なのです。

おおすみ型輸送艦はクレーンも装備しています。これは車両や物資を主に港湾において、迅速に積み降ろしするため


舟艇等がなければ砂浜や岸壁に、車両や物資をおろす(揚陸)ことなどできません。


これがあるのが、フェリーと、軍事組織である海上自衛隊の輸送艦の最大の違いかと
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有事の際の揚陸作戦では、おおすみ型輸送艦はおもに「舟艇等」を使って、岸壁に車両や武装した陸上自衛官を揚陸させていきます。


揚陸とは別の国、例えばアメリカやらでは上陸作戦、と呼んでいます。


有事の際の海上輸送では、輸送艦だけでなくフェリーも使うことになります。


ただしフェリーの場合、港湾設備がないと
下ろせないため、友軍の支配地域で且つ港湾があるところへの、増援としての運用になります。また、大抵の場合フェリーは輸送艦よりとろい、速度が遅いです。


話を戻します。おおすみ型輸送艦のLCACは戦車(約50トン)を含め、陸上自衛隊の持つあらゆる車両が揚陸できます。


フェリーなどでも戦車がはこべるフェリーも多少はあるでしょうが、前にいった耐荷重の問題があります。

また弾薬類、火薬類、燃料などの輸送も、民間船には制約があると思います。


【輸送艦】
(車両甲板)
戦車等車両 → → → ↓       
          →→LCAC |扉
         (ウェルドッグ) 海上

輸送艦内で横に移動してLCACに乗せる
艦首から艦尾に向かって

    扉が開き、LCAC発進→岸壁。 です。


ウェルドックからは、LCAC以外にも高速ボート、AAVー7も発進できます。

高速ボートは主に、先見偵察部隊の特殊部隊を隠密裏に揚陸地点か、その近辺まで運ぶ、


AAVー7は人員、やある程度の中火力火器を主に運びます。AAVー7の特徴はウェルドックから海に直接ドボンと進み、海上を船のように航行、上陸したらそのまま戦闘車両として直接、上陸部隊を支援します


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フェリーと輸送艦の違い (その1序章) [自衛隊・輸送艦など]

たまにニュースやらで耳にする、海上自衛隊の「輸送艦」、おおすみ。
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非常に重要な艦種なのになんか扱いが地味で、あまり知られていない。

輸送艦とはなにぞや?ここでは今の海上自衛隊の輸送艦について書く。

輸送艦というには輸送を行う艦船だ。平時も有事の際も。


なにを運ぶのか?おもには車両、人員(完全武装した陸上自衛官を含む)、物資だ。輸送艦の場合、基本的には陸上自衛隊の車両やら弾薬を運ぶことが多い。

ちなみに後述するが、災害派遣や病院船、緊急時に海外の日本人救出やらも、副次的ながら非常に重要な任務だ。

いや、むしろ起きる可能性や頻度は遥かに大きい。


おおすみ型輸送艦の場合重さは、排水量(重さのことになる)8900tである。世界的にみたら中くらいの大きさ。


ちなみに陸上自衛隊の車両類を運ぶのはフェリーでも基本的には可能だ。ならば輸送艦はなにがフェリーと違うのか?(ここでは構造面での話)


普通のフェリーの場合は運ぶのはおもには、トラック、乗用車になる。陸自の車両はそれらの普通の車両に加え、極端な例をだせば戦車、装甲車など重さが非常に重いのもある。

輸送艦は、よって床の部分が非常に頑丈(耐荷重が高い、と言う)

フェリーの場合100%、物の積み降ろしを行うのは、整備された港になる。

輸送艦はもちろん港を使うことも多いが場合によっては砂浜などの岸に物資、人員を下ろす(揚陸という)必要があることがある。
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戦時になれば港は真っ先に攻撃されて破壊されている可能性が高いからだ。大地震などでも。


砂浜などに車両類を下ろす、言うは簡単だがなかなか難しいこと。


どうやるのか?結論を言うと輸送艦の採用している方法はLCACという上陸用のエアクッション艇(いわゆるホバークラフト)を使う方法を使う。


輸送艦にはウェルドックという部分にLCACを収容している。LCACは高速。これを使って輸送艦から砂浜などに車両などを下ろす。これを揚陸という。



~続く →次の記事に
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