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仙台の警察官刺殺・発砲について考察。 [警職法による武器使用]

久しぶりに私の行政法の書籍。こいつが役に立つ日が来ましたね。


CIMG9773.JPG

専門書なので2700円した。2014年発行。


9月19日早朝、仙台の交番で、33歳の巡査部長が、拾得物の届け出にきたという男にさされ死亡。男は交番に居た別の男性巡査部長に拳銃で撃たれ死亡した。

男は刃渡り20cmの包丁とモデルガンのようなものを所持。


県警は殺人容疑で男、相沢容疑者を容疑者死亡で書類送検する方針。

↑ これが事件の概要


さてこいつの事件の警察官の武器使用の考察をするわけだが、その際に必要なのは、警察官職務執行法第7条、の条文とその知識だ。


世間には感情論で、よかっただ悪かっただ批評するコメンテーターやらもいるが、これは行政法の世界だ。


違法か、適法であるかのどちらかでしかない。


警察官職務執行法第7条、のうち今回の事件で必要そうな部分のみ抜粋する。↓

警察官は、犯人の逮捕若しくは逃走の防止、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の抑止のために必要であると認める相当な理由のある場合においては、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。

i ただし刑法36条(正当防衛)、等の場合を除いては人に危害を与えてはならない。


そして今判明している事実関係においてはこうだ。↓


巡査長が戻ると、(死亡した)巡査部長が倒れていた。相沢容疑者が刃物とモデルガンのようなものを持って向かってきたため、「刃物を捨てろ」と警告したあと拳銃の弾3発を発砲した。

発砲した巡査長は耐刃防護服は着ていなかった。



警察官職務執行法第7条の、武器使用要件では①犯人の逮捕等 ②自己若しくは他人に対する防護 ③公務執行に対する抵抗の抑止。 と3つのうち1つでも満たしていればよい

①満たしている (凶器を持って向かってくる現行犯、殺人容疑(ただしこの時点ではおそらく刺された警察官の死亡は判明していない) ②満たしている ③満たしている


武器の使用要件はクリアしていると考えられる。特に②の 自己若しくは他人に対する防護 のための武器使用と考えられる


いわゆる危害許容要件 i も、正当防衛を満たしていると考えられる。危害許容要件とは人に対して拳銃を直接使用することのできる要件とでも言おうか。


正当防衛=急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するためやむを得ずにした行為


ちなみにこの、危害許容要件の正当防衛と、私たち一般の正当防衛は全く同一というわけではない。


警察官の危害許容要件の正当防衛の場合、狭いとは考えられるが警察官の「裁量」という概念が入る。


よって簡単に言ってしまえば、正当防衛と認められやすい。


私たち一般は、正当防衛という判断に、裁量という概念は全くなく、刑事裁判になった場合、裁判官が正当防衛の成立を認めなかったらただちに有罪である。


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